夏馬の眼

心に残る本や映画のお話しです。

『経済学・哲学草稿』――カール・マルクス

資本論』を読んでいるよりも『経哲草稿』を読んでいるほうがいカッコいい――と、誰だかった忘れたが、高校生のときに言われた記憶がある。

それを真に受けて、私も『資本論』は巷でよく言われるように第一部だけさっと目を通し、あとは『経哲草稿』を繰り返し読んだものだ。そして、実際のところ、どういうわけかよくわからないのだが、『経哲草稿』はおもしろい。

資本論』はしっかり構成されて出来上がっている本だから、順番に読んで行けば自然と積み上げられて行くようにできている。そして――これは私だけの問題なのかもしれないけれど――結局のところ私たちはなにを考えるべきなのか、なんだかよくわからないままに終わる。第一部しか読んでないけどね。

他方で『経哲草稿』は、とにかくあれこれ考えさせられる。それはたぶんマルクス自身があれこれ考えながら書いていたからかもしれない。なにしろ「草稿」というくらいだから、きっとそうだろう。

私が考えたいのは、ところで労働者は自由になったところで、それからどうするのだろう?ということだ。

確かに産業革命当時の労働環境の劣悪さはよろしくない。いまも「ブラック企業」とかいう言葉があるけれど、それでも大半の労働者が夜の時間を持ち、休日を持っているわけだ。で、なにをしているのか?と問えば、結局のところ、暇を持て余し、暇潰しに躍起になっている。――ようにしか見えない。

それこそが自由を得られていないことの証であるとか言い出す人がいるのかもしれないけれど、自由というのはハイエクが言うように「〇〇からの自由」という以外に定義のしようがないものだと思うし、だから、自由になったらこうなる!なんて話はすべて嘘っぱちというか、そう言っている当人の個人的な希望みたいなものに過ぎない。

で、マルクスは自由になったらなにをしたかったのだろう?

画でも描きたかったのかな?という気がする。

『経哲草稿』というのは、そういうことをいろいろ考えさせてくれる本だ。