夏馬の眼

心に残る本や映画のお話しです。

『137億年の物語』――クリストファー・ロイド

「宇宙が始まってから今日までの全歴史」とのサブタイトルがついている。大きな話だ。大きすぎて眩暈がする。500ページに迫る大部だが、おもしろいのは300ページまで――そこで、コロンブスが登場する。それ以降、読者はひたすらこの星における人類の愚かな振る舞いをこれでもかと見せつけられる。

100ページほどのところで現生人類が登場する。ちょっと早いのではないか、と思う。古生物に興味がある人には――古生代中生代に関心の強い人には――かなり物足りないだろう。実際、カンブリア紀の好きな私も、もう人類が出てくるの?と、いささかがっかりした。なにしろそこまでの時間のほうが本来は圧倒的に長いのだから。

しかし、歴史というのは残されたものであり、もっと言えば、いまの我々が手に取って見ることができるものだけが歴史なのだ。そのような意味で、歴史は常に書き換えられて行く。今後、新たな発掘がなされれば、これまでの古代史などいっぺんに消し去られてしまう可能性は常にある。つまり歴史とは、過去に実際に起きたことではなく、現在を生きる我々が過去に起きたと認識していること、なのである。

とはいえ、この規模の通史としては、とても読みやすい。十代にちゃんと勉強しなかったなあ…とやや後悔している人には、是非ともお薦めしたい。最低限の「教養」を身につけることができる。図版や年表などもわかりやすく、私もちょくちょく開いてみるために、書棚の手に取りやすい場所に置いてある。

あれ、そういえばオスマントルコっていつごろどれくらいまで大きくなったんだっけ?なんていうときに良い。そのまま前後の出来事までついページをめくり始めてしまい、飽きさせない。古新聞みたいな紙質も、なかなかうまい工夫である。