夏馬の眼

心に残る本や映画のお話しです。

『素数ゼミの謎』――吉村仁

ちょっと古い本だが、経年劣化に耐え得る良書。

ここで扱われているのは、有名な13年ゼミや17年ゼミであり、日本のセミはほとんど出てこない。日本のセミは素数と関係していないからである。恐らくそれは、天敵やら細菌やら、日本のセミを素数へと導く淘汰圧が低かったからであろう。

素数ゼミとは、つまり、淘汰圧の結果として、淘汰から逃れるために、発生サイクルを素数に収斂させていったセミ、ということだ。

小学校で習った「最小公倍数」の話である。素数が現れると、最小公倍数はいきなり大きくなる。12と18の最小公倍数は36だが、13と17のそれは221だ。つまり、12年ゼミと18年ゼミとは36年ごとに出会うけれど、13年ゼミと17年ゼミとは221年に一度しか出会えないのである。

誰かと一緒になりにくい(一緒になりたくない!)、というところがミソで、そういうお話しをまとめたのが本書だ。

素数というのは、つくづく不思議な数である。

そういえば、「ゴールドバッハ予想」もまだ証明されていない。

ゴールドバッハ予想」というのは、2より大きな偶数はふたつの素数の和になっている、というやつで、有名な「フェルマーの最終定理」と同様に、数学者でなくとも、その意味するところが分かる予想のひとつである。

どうしてこれが証明困難なのか、残念ながら私には理解できない。数学ができたら、世界は素晴らしくおもしろいものだったろうと、よくそんなことを考える。

ああ、数学。。