夏馬の眼

心に残る本や映画のお話しです。

科学の本

『眼の誕生』――アンドリュー・パーカー

言わずと知れた名著である。 なぜカンブリア紀に生物の爆発的な多様性が起きたのか?に対する回答が、「眼の誕生」の意味するところなのだが、実を言うと、カンブリア紀についてこれだけテーマを絞って書かれた本というのは、本邦ではこれしかない。(昨年の…

『137億年の物語』――クリストファー・ロイド

「宇宙が始まってから今日までの全歴史」とのサブタイトルがついている。大きな話だ。大きすぎて眩暈がする。500ページに迫る大部だが、おもしろいのは300ページまで――そこで、コロンブスが登場する。それ以降、読者はひたすらこの星における人類の愚かな振…

『素数ゼミの謎』――吉村仁

ちょっと古い本だが、経年劣化に耐え得る良書。 ここで扱われているのは、有名な13年ゼミや17年ゼミであり、日本のセミはほとんど出てこない。日本のセミは素数と関係していないからである。恐らくそれは、天敵やら細菌やら、日本のセミを素数へと導く淘汰圧…

『双子の遺伝子』――ティム・スペクター

同じ塩基配列を持ったクローンであるはずの一卵性双生児が、なぜ、似ても似つかぬ人生を送るのか? 性格も違えば能力も違う、体つきも、罹る病気だって違う。これはいったいどういうわけだ? というお話である。 そこで、「エピジェネティクス」なる考え方が…