夏馬の眼

心に残る本や映画のお話しです。

小説

『山月記』――中島敦

隴西の李徴は博学才頴、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交わりを絶って、ひたすら詩作に…

『1973年のピンボール』――村上春樹

初期三部作の一冊という位置づけにはなっているようだけれど、これは村上さんの作品の中でもちょっと異質な物語だと、私は感じている。 そしてこれも、『愛のゆくえ』と同じく、何度も読み返してきた一冊である。気分がいいから、というのがその理由だ。 か…

『愛のゆくえ』――リチャード・ブローティガン

読むたびに同じシーンで笑い、同じエピソードで考えさせられ、最後は気分良く本を閉じることができる。だからつい何度も読んでしまう。 本書はそうした貴重な一冊。 なんの仕事なのだかさっぱりわからないのだが、しかし、休むことなく真面目にそれを勤めて…